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94年に来日しましたが、それまで日本の味にはほとんど馴染みがありませんでした。スシ、サシミも未体験。でも余計な先入観がなかった分、日本へ来てから食べた和食に率直に感動でき、素直に楽しむことができたのかも知れません。
最初は日本語も解らず、食事もレストランの厨房で作るフランス料理、いわゆる"まかない"でしたから、外食の機会もあまりありませんでした。だから最初に経験した和の味は、当時の上司が連れて行ってくれた寿司。洗練された魚の味とプロフェッショナルな日本料理の味・技術をそのとき初めて実感し、そしてもちろん、おいしかった。とても良いスタートでした。
生活や日本語にも慣れてからは、食べ歩きも楽しむようになりましたが、そのうち自然に、自分の料理にもさまざまな和の食材を取り入れるようになりました。しかし、それはただ単に日本の食材を使うということではなく、その中にいかにフランス料理のエスプリと自分の個性を活かすかを考えることが大切だと思っています。

フランス料理と日本料理との違いとして、まず思い浮かぶのはソースの有無です。フランス料理では、ソース作りに非常に多くの手間と時間をかけます。昔に比べ、質・量共にライトな料理が増えたとは言え、ソースはやはりフランス料理の精神を顕すものです。一方、日本料理はソースを使いません。そして一見、とてもシンプルに見える。でも、実はそこにはフランス料理におけるソース作りと同じ精神によって、食材の真価を活かすための仕事
- 非常に丁寧な下ごしらえ - がなされています。
一見、大きく違って見えるフランス料理と日本料理ですが、そこには案外共通点も多いように思います。そのまず第一は、食材を大切にすること。どの国でも食材は料理の基本ですが、この2つの料理においては殊更、その質や鮮度が重要視されるように思います。そしてまた共通するのは、料理に作り手のセンスが表れる、非常に繊細な食文化だという点です。日本に暮らす私は、図らずも日々その両方の食文化に触れるという貴重な経験をしていますが、これはフランスの料理人として、とても幸運なことと言えるでしょう。その経験を踏まえ、今後創ってゆきたいと思うのは、面白い料理。"面白い"とは、つまり「インタレストがある」ということです。
経験さえ積めば、「おいしい」料理は誰にでも作れます。しかし、私が目指すのは、ただおいしいだけでなく、食べる人の心に歓びを届ける料理。誰かの物真似でなく、そして20代や30代の時ともまた違う、これまでに培った経験や知識を活かし、自分のエッセンスを込めたひと皿です。これからも日仏での活動を続けながら、そんな料理を創造してゆきたいと思っています。
このHP上でも、今後、さまざまな新しい料理を発表する予定です。新しく、そして愉しいフランス料理の世界へ。どうぞ、いつでもこのHPへ遊びにいらしてください。
ドミニク・コルビ
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